※平成29年度をもって終了しました。
分子を柱や梁にみたてて建築物のように組み立て、調和のとれた電子・光・情報処理機能を発現させる
精密な分子設計と電極表面構造設計を基本とし、光・電場・磁場によるスイッチング機能を創出するとともに、そうした機能を持つ単一分子素子をやみくもに集積するのではなく、電流信号のゆらぎやバラツキを積極的に利用するための組織化を行い、 多数の分子の恊働機能による信号処理の実現を目指します。 「分子アーキテクトニクス」には、分子を柱や梁にみたてて建築物のように組み立て、調和のとれた電子・光・情報処理機能を発現させる意味をこめています。 研究者は、いわば「分子アーキテクト」(分子建築士)として、「設計」と「ものづくり」に参加し、柱(分子)を土台(表面)のどの位置に、どのような様式で接続し、柱と梁をどのように組み合わせるかを緻密に設計し、組織体を作り上げることを目指します。
特色 FEATURE
単一分子で、整流、増幅、負の微分抵抗、積分型閾値機能、ヒステリシス、磁気抵抗効果などの非線形・非対称電子機能を実現する分子の設計、合成、単一分子電気特性計測を行い、分子構造・電子構造と単一分子電子機能の相関を明らかにします。
トンネル領域を超える長距離の電荷輸送を担う炭素材料として、(m, n) 指数が揃った単層カーボンナノチューブ、グラフェンナノリボンなどと有機物の複合化に必要な基礎理学的な研究と、それらの電子機能の研究を行います。
非線形・非対称電子機能を持つ分子の集積化を行うことで、確率共鳴による微小信号検出、神経様ノイズ・パルス発振器、電子粘菌などの高次の電子機能を実現することを目指します。
成果 RESULTS
研究成果
生物の神経の振る舞いと関連づける
単層カーボンナノチューブ(SWNT)上にポリオキソメタレート誘導体(POM)と呼ばれる分子を乗せて、電極につなぎ電圧をかけると、興味深い電圧-電流特性が見られます。電圧を掃引すると、電圧が上がっているにもかかわらず電流が減少するカ所があります。この様な現象を負の微分抵抗(NDR)と呼びます。NDRの振る舞いは、生物の神経の振る舞いと関連づけることができ、様々な興味深い現象につなげることができます。この系は、NDRが複数個つながっていると理解でき、この様な系では発振現象が起こる可能性があります。そこで、電圧を上げていくと、予想通りに電圧に比例したノイズが発生し、ある電圧以上になるとパルス状の電流が流れるようになりました。この現象のモデルを提唱し、そのモデル上でリザーバー計算を行うと期待通りの情報処理が行えることが示されました。
今後の発展
生物類似の情報処理
POMに電極との結合するアンカーを導入し、機械破断分子接合作製法(MCBJ)と呼ばれる手法で単一分子での電気特性を測定したところ、上記研究成果に示した結果より遥に大きなON-OFF比を持つパルス状の信号が出ることが分かりました。この信号の解析を行ったところ、ランダムな信号では無く、Xi=F(Xi-1) (iは、時間の順序を現す)で一般的に現すことができるダイナミクスを持っている事が分かりました。このようなダイナミクスを持つ信号は、リザーバー計算、長期短期記憶(long short-term memory, LSTM)等の生物類似の情報処理に適しているため、単純なクロスバー型素子でのdynamic telegraph signal源として用いる事を計画しています。