大阪大学大学院理学研究科附属基礎理学プロジェクト研究センター大阪大学大学院理学研究科附属基礎理学プロジェクト研究センター

新たな価値創造に挑む
基礎理学プロジェクト研究センター

 大阪大学大学院理学研究科附属基礎理学プロジェクト研究センターは,2011年10月に設立され大学院理学研究科に属する6つの専攻や2つの附属センター(熱・エントロピー科学研究センターと先端強磁場科学研究センター)における教育研究と並行して,理学研究科の教員を中心とする先鋭的な研究プロジェクトを,理学研究科内外の学問領域と協力しながら,集中的かつ機動的に推進することを目的とした組織です。個々のディシプリンの深化だけでなく,従来の学問分類に収まりきらないような研究課題を発掘して新しい基礎科学を開拓し,大型競争的資金を獲得できるプロジェクトに発展させていく使命を担っています。さらに,大阪大学が掲げる「共創」による価値創造を,基礎科学の分野で具現化する場でもあります。学問の価値は,一つの物差しで測りきることはできません。人間の好奇心を満たし,知的な文化を創造していくことも大切な価値ですし,人類社会の抱える課題の解決に加担することも重要な価値と言えます。基礎理学プロジェクト研究センターでは,従来の視点からのみの研究成果を追求するだけではなく,基礎研究や学術研究が他の分野(人文・社会科学を含む)の応用研究や開発研究と出会って広がって発展することを目指し,本センターしかできない社会的な価値を生み出していきます。

 近年注力しているのが,基礎科学に根ざした産学共創です。現在は,「日本電子YOKOGUSHI協働研究所」や「ユシロ化学工業ポリマーゲル共同研究講座」に参画して産業界との共同研究が進められています。特に,質量分析に関する計測技術の基礎研究に注力し,多様な研究者と複数の企業が参画する「質量分析オープンイノベーション協働ユニット」を2018年3月に立ち上げ,先導的なイノベーションを興そうと努力しています。さらに,本センターは,大阪大学放射線科学基盤機構や量子アプリ共創コンソーシアムで全学的に進められている「アルファ線核医学治療開発プロジェクト」の基礎研究部分を一手に担っており,大阪大学のオンリーワンの研究を進めることで,大阪大学や理学研究科のプレゼンスを学内外に示します。

 「共創」においては,何が課題か,何を研究するか,このレベルから議論をスタートします。そのために,本センターでは,「理学の響宴 しゅんぽじおん」を定期的に開催し,科学者が集まり,議論をしかけ,話を膨らませ,『知への愛(フィロソフィア)』を説きながら,新たなアイデアを生み出そうとする試みを進めています。このような創発的な場にも,社会実装までを視野に入れた基礎・学術研究プロジェクトの場にも,ぜひ参画していただきたいと思います。本センターの今後の挑戦と躍進にご期待いただくとともに,いっそうのご協力をよろしくお願いします。

2020年4月
 
大阪大学大学院理学研究科附属
基礎理学プロジェクト研究センター
センター長 小川 哲生